スイープトウショウ|歴代最強馬|追込の脚線美|名牝たちの記憶⑧

名牝たちの記憶
jra-van

スイープトウショウ
追込の脚線美

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スイープトウショウ 追込の脚線美

これほどまでに女王気質を剥き出しにした名牝は彼女をおいて他にいないだろう。

調教で動かず、ゲートには入らず発走時間が遅れることで有名になった。それでも彼女の追い込む末脚には誰もが魅了された。

今回はG1を3勝し、追込の脚線美と称されたスイープトウショウの記憶を振り返りたい。

歴史あるトウショウの系譜

エンドスウィープは主に短距離で活躍したが大レースには縁がなかった米国産馬。
ところが種牡馬入りすると1998年に新種牡馬リーディングサイアーを獲得するなど現役時とは真逆の活躍を見せた。

その後、2000年から日本で供用されるも3年後に事故でこの世を去っているが、スイープトウショウは日本での初年度産駒にあたる。

母は冠名トウショウで超有名なトウショウボーイの母ソシアールバタフライの血を受け継ぐタバサトウショウ。現役時は中央で走り6戦1勝の戦績で繁殖入り。

ある意味で期待外れの大活躍を見せた父エンドスウィープとトウショウ牝系の根幹となった曽祖母ソシアールバタフライの血を持ったスイープトウショウは、新世紀始まりの年にタバサトウショウの3番仔として産声を上げた。

女王様気質

幼駒時代は高い能力を持った牝馬として期待されるも走ることを拒否し馬房からも出ない。その素振りはまさに人間を毛嫌う女王様。

この性格は競走馬になっても変わることはなかった。

そんな中、無事にデビュー戦を迎えたスイープトウショウは、ここではものが違うと言わしめ新馬戦、ファンタジーS(G3)と連勝。一気に2歳女王まで1番近い存在へと登り詰めた。

そして迎えた2歳女王決定戦の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)では、堂々の1番人気に支持されるも最後の直線で前を塞がれる不利などが影響してかヤマニンシュクルの5着に敗れてしまい、2歳女王の座を逃してしまう形となった。

ゲート難・出遅れが代名詞

年明けは、紅梅S(OP)から始動したスイープトウショウ。
ここをレースレコードにて勝利すると、桜花賞トライアルのチューリップ賞(G3)では、2歳女王ヤマニンシュクルを撃破。

5戦4勝で桜花賞(G1)を迎えることになる。ただ、結果的に連勝という素晴らしい戦績だが、中身は出遅れやゲートに入らないなど課題は残されたまま。それでも追込一手の末脚で勝ってしまうのだから恐れ入る。

さて、桜花賞では、ここまで3戦無敗の天才少女と呼ばれたダンスインザムード(オークス馬ダンスパートナーと菊花賞馬ダンスインザダークの妹。のちに繁殖牝馬として神の馬を輩出した名牝)と武豊騎手が、1番人気を背負い、スイープトウショウはそれに次ぐ2番人気に支持された。

相変わらずのゲート嫌い、今回は出遅れがなかったものの早め抜け出しを図ったダンスインザムードに追いつけず5着に敗退。

それから1ヶ月後のオークス(G1)では、桜花賞馬となったダンスインザムードが引き続きの1番人気。スイープトウショウは、4番人気まで支持率を落とした。

レースではダンスインザムードが最後の直線で伸びず、それを交わすも前を走る福永祐一騎手を背にした6番人気のダイワエルシエーロを捕らえずことができず、2着でゴール板を通過。スイープトウショウにとって春のクラシックは不発に終わってしまう。

女王の意地

これまでクラシック最有力候補とされながら春は無冠に終わったスイープトウショウ。
夏の休養では、普通の馬はここまでならないと言われたほどの疲労感をみせたため笹針治療を行った。おそらく神経質な部分がそうさせたのかも知れない。

迎えた秋初戦は秋華賞トライアルのローズS(G2)から始動。ここでオークス馬ダイワエルシエーロには先着するも他の有力馬に交わされ3着。ゲート難からくる出遅れが響いた形となった。

それでも本番の秋華賞(G1)では、米国に遠征しアメリカンオークスで2着となったダンスインザムードに次いで2番人気に支持された。

なお、翌年にシーザリオが挑戦し日本馬として初となるアメリカンオークス(米G1)を制覇している。
さて、肝心のレースは、1番人気のダンスインザムードが最後の直線でまたも失速。2歳女王ヤマニンシュクルが一時先頭に立つも今度こそスイープトウショウの末脚が炸裂する。2歳女王を一気に交わし最後は半馬身差を保ち優勝。

初のG1勝利が牝馬クラシック制覇となった。
その後、真の女王の座を懸けてエリザベス女王杯(G1)に出走。日本が誇る女帝エアグルーヴの長女で前年の覇者アドマイヤグルーヴや前年の牝馬三冠馬スティルインラブなど牝馬古馬超一級線と初対戦となった。

秋華賞勝ちと斤量差などから1番人気に押し上げられたスイープトウショウ。
しかし、ここでも出遅れ後方の大外から末脚と代名詞になった戦法も勝ったアドマイヤグルーヴに届かずの5着。課題を残したままシーズンを終えた。

39年振りの快挙

年が明け古馬となったが、相変わらずの女王様気質は変わらない――。

そんな中で今後の路線をマイル〜中距離と定めた陣営はスイープトウショウに合ったレースがなかったため長期休養を選択。
帰厩後、春先のオープン戦で5着とまさかの敗退。ここでも出遅れ後方となったことが敗因とされる。

続いて、春のマイル王決定戦である安田記念(G1)に出走。ここでは前走の不甲斐ない敗北が影響を受けたのか、大きく評価を下げた10番人気。それでも大混戦となった、このレースで2着に入る活躍を見せた。

ただ、スイープトウショウの代名詞はこのレースにも付随していた。
出遅れ後方からの末脚とレース開始からハンデを背負うような形を陣営は何とか解消できないものかと模索するも女王様はなかなか応えてはくれなかった。それでもスピード自慢が集まった安田記念で2着に入るのだから仮に女王気質が解消されていたら…と思ってしまう。

その後、次走の宝塚記念(G1)では11番人気で臨んだが、ゲートもすんなり、スタートもすんなりと陣営の祈りが通じたのか前目中段に位置を取ることに成功した。

ただ、出走馬は、タップダンスシチーや秋古馬三冠馬のゼンノロブロイ、そしてハーツクライといった並みいる超強豪馬ばかりで一筋縄ではいかぬメンバー構成。
しかし、スイープトウショウは高い潜在能力を競馬ファンに魅せつけたのである。

最後の直線で逃げるタップダンスシチーを捕らえ、更にはリンカーンも捕えた。
異次元の末脚を魅せたスイープトウショウ。最後はハーツクライの猛追もあったがクビ差で優勝。牝馬が宝塚記念を制するのは史上2頭目の快挙、実に39年振りとなった。

追込の脚線美

宝塚記念を制した後、放牧に出されたスイープトウショウは、秋初戦となった毎日王冠(G2)で6着。天皇賞・秋(G1)でも5着とグランプリホースとして精彩を欠く形となった。
そして、迎えた次走のエリザベス女王杯。

ここでは、この年の秋華賞馬で武豊騎手騎乗のエアメサイアが1番人気。それに次ぐ2番人気に支持されたスイープトウショウ。レースでは、出遅れ後方と相変わらずの気性難を見せるも最後の直線で追込の脚線美を披露する。

このレース3連覇を狙うアドマイヤグルーヴを差し、先頭のオースミハルカを半馬身差に交わしたところでゴール。見事G1・3勝目を手にした。
この結果、G1・2勝を挙げたこの年の最優秀4歳以上牝馬に選出されたが、気性難からくる女王様は実力で真の女王に上り詰めたと言って良いだろう。

骨折を乗り越え

4歳で真の女王となったスイープトウショウは、翌年の2006年から新設された春の牝馬マイル王決定戦ヴィクトリアマイル(G1)を目指したが、調教中の骨折により春は全休となった。

その後、秋競馬での復活を目指して調教を再開し、10月の京都大賞典(G2)から始動。
ここには英雄ディープインパクトの日本ダービー(G1)で2着だったインティライミが、1番人気に支持され、約1年振りの実戦にもかかわらず、ファンはスイープトウショウを2番人気に支持した。
そんなファンの思いを知ってか、レースでは、珍しく中団に位置したスイープトウショウは、最後の直線で豪快な末脚を魅せた。

結果的に2着に4分の3馬身差を付けて辛勝。実に中328日の長期休養明けでの重賞勝利は史上5位の記録となった。

G1・4勝目も見えてきたような走りを披露したスイープトウショウは次走の天皇賞・秋(G1)を1番人気で出走する。

しかし、ここでは追い込みが届かず5着に敗れ、連覇を狙ったエリザベス女王杯では、のちにアーモンドアイの母となるフサイチパンドラの2着に敗れて連覇ならず。
暮れの有馬記念(G1)では、後方のまま末脚不発で10着に敗れ、5歳のシーズンを終えた。

最後まで女王様

有馬記念の大敗でそのまま引退かと思われたが、6歳となった翌年も現役を続行。
しかし、春のマイラーズC(G2)では、2着に入るもヴィクトリアマイルでは9着。続く宝塚記念に出走予定も厩舎で暴れてしまい右後脚を打撲で出走を回避。

秋は京都大賞典で復帰予定も調教を嫌がり調整不足のため回避。何とかスワンS(G2)で復帰するも4着。
現役最後となったエリザベス女王杯では、ダイワスカーレットの3着に敗れて現役引退となった。

レースではゲートに入らず再試験を受けること4回。
この4回のゲートに入らない状況で発走時刻が遅れた合計12分の遅延。
また、調教では坂路で立ち止まること30分は当たり前。機嫌が悪くなると動かなくなる女王様は、自身が納得しなければ動かない性格で調教に向かうまでも時間を要した。
それでも彼女は、G1という大きな勲章を3つも手に入れた。競馬にタラレバは禁物だが、もし女王様気質がなければ、あとG1も2つ3つと勝てたのではないかと思われる。
しかし、ゲートに入らない、出遅れ、後方待機からの末脚披露。

これこそが最後まで女王気質だったスイープトウショウの醍醐味であり、多くの競馬ファンに愛された彼女にしか表現できない愛嬌だったのだ。

ラストクロップは英雄の仔

現役を引退した女王様は母となり、2020年の12月に亡くなるまで10頭の仔を産んでいる。

しかし、今日までこれといった産駒を輩出していない。それでも残された娘たちがスイープトウショウの血を継ぎ、先日も孫が中央のターフでデビューを飾ったのは何よりも嬉しかった。

そんなスイープトウショウの血を継ぐ最後の仔となったのは、2019年に惜しまれつつこの世を去ったディープインパクトとの間にできた牡馬である。
英雄が日本で残したラストクロップは僅か6頭。その中にスイープトウショウの仔が入っているとは何とも言えない喜びである。

そして、父母ともにラストクロップとなったスイープアワーズは2022年に2歳となりデビュー予定である。

ディープインパクトとスイープトウショウの忘れ形となったスイープアワーズには、色々な意味で期待せざるを得ないだろう。
英雄と女王様の仔――考えるだけでも楽しみは尽きない。

そして、必ずや希代の女王様スイープトウショウの血を後世まで残してくれると信じたい。

エンドスウィープ フォーティナイナー Mr.Prospector
File
Broom Dance Dance Spell
Witching Hour
タバサトウショウ ダンシングブレーヴ Lyphard
Navajo Princess
サマンサトウショウ トウショウボーイ
マーブルトウショウ

生涯戦績 24戦 8勝(8-4-2-10)
主な勝鞍 秋華賞、宝塚記念、エリザベス女王杯


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