リスグラシュー|歴代最強馬|遅咲きの女王|名牝たちの記憶⑱

名牝たちの記憶
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リスグラシュー
遅咲きの女王

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リスグラシュー 遅咲きの女王

遅咲きの女王――リスグラシューを語る上でこれほど似合う異名はないのではないだろうか。

父ハーツクライ同様になかなか勝ち切れないレースっぷりから突如覚醒。圧巻だったラスト3戦で歴代最強馬に上り詰め、年度代表馬にも選出された名牝である。

今回は、まだ記憶に新しいリスグラシューについての記憶を振り返りたい。

遅咲きの血統背景

父は日本競馬史上歴代最強馬と呼び声高い英雄ディープインパクトを破り、その名を世界に轟かせた大種牡馬ハーツクライ

母のリリサイドは、日本で桜花賞(G1)に相当する仏国の1000ギニー(仏G1)で1位入線しながらも降着した経歴を持ち、現役時代は11戦5勝で繁殖入りした。
また、母の父アメリカンポストは、仏国の2000ギニーなどG1を3勝している。

そんな良血背景を持つリスグラシューは、2014年1月18日に北海道安平町のノーザンファームにて誕生した。

血統面からも期待の大きい牝馬ではあった。しかし、精神的に弱い部分があり、また、晩年に活躍馬が多いハーツクライ産駒なだけあって、現役時代も父と同じくデビューから順調ではなかった。

同世代に”怪物”の娘あり

2歳となったリスグラシューは、8月末の新潟でデビュー。ここでは2着に敗れたものの翌月の2戦目では4馬身差で快勝。
続く重賞初挑戦となった3戦目のアルテミスS(G3)では、武豊騎手を背に1番人気を応える形で2着に半馬身差で勝利。連勝で難なく重賞初制覇を成し遂げた。

これで一気に同世代の代表牝馬に名乗りをあげたリスグラシューだったが、2歳女王決定戦の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)は、世界的大種牡馬・”怪物”フランケルを父に持つ超良血馬ソウルスターリングが大きく立ちはだかった。

さらに発走前、ゲートで待たされたことが災いしてか、スタートで出遅れてしまい、最後の直線では、大外から鋭く追い込むも先に抜け出していた怪物の娘ソウルスターリングに届かずの2着と惜敗。それでも世代トップを決めるレースで2着は恥じる内容ではない。

ただ、この時、まだ本格化していないリスグラシューにとって、この先”惜敗続き”という看板を背負うレースが度重なるのであった。

惜敗の日々

年が明けて、牝馬三冠路線に突き進むことになったリスグラシューだが、桜花賞(G1)ではレーヌミノルの2着、オークス(G1)は、ソウルスターリングの4着と敗れ、秋華賞(G1)でもディアドラの2着と惜敗するレースが続いた。

その後、その年の最強牝馬決定戦であるエリザベス女王杯(G1)でも上がり最速タイの末脚を見せたが、同世代のモズカッチャンの8着と僅かな差で勝利を逃す日々が続き、結果的に3歳では6戦0勝で終えたのである。

4歳となった年明け初戦を東京新聞杯(G3)に出走したリスグラシューは、初の牡馬混合重賞戦となった。

しかし、ここでは中団で脚を溜め、直線で馬群内を突き破り、サトノアレスら有力な牡馬勢を一蹴。2歳時のアルテミスS以来となる重賞2勝目を飾った。

ところが、いざ、大一番を迎えると、ヴィクトリアマイル(G1)では2着、安田記念(G1)は8着と春のG1を善戦するも美酒を味わうことはできなかった。

咲き始めた才能

あと一歩が足りない――これもハーツクライ産駒の特徴だったのかも知れない。

しかし、G1を勝つだけの素質はある陣営は、昨年8着に敗れたエリザベス女王杯に再び狙いを定め、府中牝馬S(G2)でディアドラの2着後、短期免許で来日していた香港の雷神こと世界的名手のJ.モレイラ騎手を鞍上に必勝態勢でG1制覇に挑んだ。

そして、ついにリスグラシューの秘めたる素質の開花の時が訪れるのである。

レースでは、逃げ粘るクロコスミアを大外から一気に強襲。メンバー最速の末脚で差し切り、見事8回のG1挑戦、4回のG1・2着を経て初の栄冠を手に入れた。

なお、ウイニングランでは雄叫びをあげるほどの喜びを爆発させた鞍上のモレイラ騎手もJRA初のG1勝利となり、人馬ともに嬉しい初G1制覇となった。

余談だが、この日の京都開催は、外国人騎手がエリザベス女王杯までの11レースを全て勝利するという事態になっていたが、辛うじて最終レースを藤岡佑介騎手が勝利したことで外国人騎手の独占状態を免れた1日となった。

香港遠征

晴れてG1馬となったリスグラシューは、次走に香港遠征を視野に入れた。そして、初の海外遠征となった香港ヴァーズ(G1)では、惜しくも2着。

さらに年明けの金鯱賞(G2)をダノンプレミアムの2着から2度目の香港遠征を決行。クイーンエリザベス2世C(G1)でもウインブライトの乾坤一擲の走りに屈し3着だった。

こうして、果敢に挑戦した海外遠征では結果を出すことができなかったが、リスグラシューが真の女王に上り詰めるのは、帰国してからの話である。

伝説の始まり

香港遠征を終え、帰国後の次走を宝塚記念(G1)に照準を合わせたリスグラシュー。

ここには、同世代のダービー馬レイデオロ、皐月賞馬アルアインに菊花賞馬キセキ、昨年の大阪杯(G1)を制したスワーヴリチャードなど、リスグラシューを含めた同世代の5歳勢からG1馬5頭に加え、1歳上のダービー馬マカヒキを含めたG1馬6頭が集結し、第60回宝塚記念は豪華顔ぶれとなった。

短期免許で来日した豪州の若き天才D.レーン騎手を鞍上に迎え、3番人気に推されたリスグラシューは、晩年に突如覚醒することに定評があるハーツクライの血脈に違わずこの日をもって覚醒することになる。

レースでは、逃げるキセキの2番手を追走したリスグラシューは、最後の直線を迎えると早めにキセキを交わし、後続の牡馬勢を嘲笑うかのような豪脚を披露し、2着のキセキに3馬身差を突き放して圧勝。

 

紅一点ながら並みいる牡馬を一蹴したリスグラシューは、この年から宝塚記念勝ち馬に与えられるコックスプレート(豪G1)の優先出走権を獲得。

秋にオーストラリアへと飛び立った。
ムーニーバレー競馬場で行われる豪州競馬の最強馬決定戦の1つであるコックスプレート。
この年も例年と違わず、現地の強豪馬や世界の一流馬が集まる伝統の一戦となった中、覚醒したリスグラシューを止められる馬はいなかった。

レースは、後方待機から大まくりをみせたリスグラシュー。2着馬と7.5キロの斤量差をものともせず、直線で先頭を捉えるや力でねじ伏せて1馬身半差の完勝。
日本馬初のコックスプレート制覇でG1連勝となった。

そして、海外G1を制したリスグラシューは年内いっぱいで引退を表明したのだった。

遅咲きの女王

有馬記念をラストランに定め、暮れの中山に脚を進めたリスグラシュー。
1番人気は、この年の牝馬三冠を圧倒的な勝利で達成したアーモンドアイさらに3歳勢の新鋭サートゥルナーリアや菊花賞馬ワールドプレミア、ジャパンC馬シュヴァルグランなどG1馬10頭という先の宝塚記念と同じく豪華すぎるメンバーが揃った中、リスグラシューは2番人気に支持された。

有馬記念といえば、かつて偉大なる父が英雄を破った舞台である。そして今、その同じ舞台でハーツクライの愛娘が伝説を刻もうとしていた。

レースでは、内で伸びを欠いたアーモンドアイを横目に中団後方待機で脚を溜めていたリスグラシューは、外に持ち出して直線一気の末脚を炸裂させた。

追いすがるサートゥルナーリアを置き去るや後続馬をノーステッキで完膚なきまでに叩き潰し、結果的には、2着に5馬身もの差をつけ圧巻の勝利。

ドリームジャーニー以来、史上10頭目(翌年クロノジェネシスが史上11頭目の偉業を達成する)、牝馬としては史上初となる同一年の春秋グランプリ制覇となり、合わせてG1を3連勝。
さらに親子二代での有馬記念制覇も達成し、満票に近い票数で2019年の年度代表馬を受賞した。

さらにはワールドレーシングでもジャスタウェイに並ぶ歴代2位タイ、国内G1の歴代最高値を記録し、引退の花道を飾ったのである。

偉大な血の行方…

早くから頭角を現すが勝ちきれない日々が続き、シルバーコレクターとさえ謡われた、かつての乙女は晩年に大輪を咲かせ、最後の最後で現役最強馬となり、そのままターフを去った。

長く苦しい冬を越え、ひたむきにかけた険しき道のりも決して諦めず自分を信じて走り続けた。その先に見えたものは純潔と威厳に満ちた遅咲きの女王リスグラシュー。

そして、早くもモーリスとの間に生まれた第1仔の牡馬シュヴェルトリリエが2023年にデビューを果たした。今後、彼女の残す仔たちが世界のターフで活躍することを待ち侘びたいと強く思う次第である。

ハーツクライ サンデーサイレンス Halo
Wishing Well
アイリッシュダンス トニービン
ビューパーダンス
リリサイド American Post Bering
Wells Fargo
Miller’s Lily ミラーズメイト
Lymara

生涯戦績 22戦 7勝(7-8-4-3)
主な勝鞍 エリザベス女王杯、コックスプレート、宝塚記念、有馬記念


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