女帝の娘
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アドマイヤグルーヴ 女帝の娘
女帝エアグルーヴの初仔
母仔3代のオークス制覇など
生まれた時から走ると期待され注目を浴びてきた1頭の牝馬。
良血馬が必ずしも走るとは限らない厳しい世界において、女帝の娘は結果を出した。
そして、母となり偉大な息子を輩出し、祖母ダイナカールから続く血を見事に拡げる名牝となった。
今回は、牝馬三冠全てを1番人気で出走した名牝アドマイヤグルーヴについての偉大な蹄跡の記憶に迫りたい。
話題の超良血牝馬
1997年、牝馬として実に26年ぶりとなる年度代表馬に輝いたエアグルーヴの初交配相手は大種牡馬サンデーサイレンス。
もちろん、話題にならないわけはない。
2000年4月30日、北海道の早来町ノーザンファームで生を受けた女帝の初仔――鹿毛の牝馬は、この年の夏のセレクトセールで上場され、2億3000万円で落札された。これは当時のセレクトセール史上最高価格であり、牝馬としても最高価格となった。
異例のローテーション
その後、栗東の橋田満厩舎に入厩し、2002年11月10日に武豊騎手を鞍上に迎え京都競馬場でデビューしたアドマイヤグルーヴ。
単勝1.2倍の1番人気に支持され、2着に1馬身半差で難なく勝利する。次走を阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に登録するも抽選に漏れてしまい除外となった。
そこで翌週のエリカ賞(現1勝クラス)に出走し、ここも2着に1馬身半差を付け勝利。2戦2勝とした。
年が明け、もちろん目指すは牝馬三冠レース。
しかし、陣営は、気性面の問題を考慮して極力長い距離を走らせるために3歳牝馬の通常ローテーションである桜花賞トライアルのチューリップ賞(G3)やフィリーズレビュー(G2)に出走させず、皐月賞トライアルの若葉ステークス(OP)に挑戦した。
ただ、この時は2勝馬であるため、このレースで2着以下だった場合、賞金不足で桜花賞(G1)に出走できない可能性もあった。
また、すでに重賞勝ちをしていたラントゥザフリーズやエースインザレースなどの牡馬が相手である。それでも果敢に挑戦する陣営にとっては、勝算が見込めたのだろう。
そこでも1番人気に支持されたアドマイヤグルーヴは、競馬ファンと陣営の期待に応え、このレースに勝利し、桜花賞への出走に辿り着くことができた。しかし、母親譲りの男勝りをみせたのは、この一戦だけとなる。
牝馬三冠レース
母エアグルーヴの牝馬三冠レースは、桜花賞(熱発にて出走できず)オークス(1着)秋華賞(10着)だった。
桜花賞は実力的に取れると言われていた中での出走できなかった母のリベンジを果たすため、アドマイヤグルーヴは満を持して桜花賞へと駒を進めた。
しかし、迎えた桜花賞では、1番人気に支持されるもスタートで出遅れてしまい、最後の直線では外から追い込みを図るが惜しくも届かず。のちに生涯のライバルとなるスティルインラブ、シーイズトウショウに続き3着と初の敗北を喫する。
次走のオークス(G1)は、母仔3代制覇の夢がかかった大注目のレースだった。しかも前走の桜花賞3着ながら、単勝1.7倍の1番人気の支持を受けたことはファンにとっても、その期待が大きかったと伺える。ただ、肝心のレースでは激しくイレ込んだ結果、レースにならず、ここでもスティルインラブの7着に敗退。残念ながら母仔3代制覇はあっけなく夢破れた。
夏の休養を経て、残る牝馬一冠を奪取するため、秋華賞トライアル・関西TVローズS(G2)から始動したアドマイヤグルーヴ。ここでもスティルインラブと3度目の顔合わせとなった。
しかし、結果はアドマイヤグルーヴが2着のヤマカツリリーに1馬身差で勝利。ライバルのスティルインラブは1番人気ながら5着に敗れた。
そして、秋華賞(G1)である。
最後の一冠は何としても獲りたいアドマイヤグルーヴは、スティルインラブを抑えて単勝2.5倍の1番人気に支持された。
その数字は17年ぶりに牝馬三冠がかかったスティルインラブ(単勝3.2倍の2番人気)よりもファンはアドマイヤグルーヴの秋華賞制覇に期待したことを物語っていた。
しかし、レースでは、道中は2頭とも中団に位置するも先に動いたスティルインラブを最後まで捕らえることが出来ずに3/4馬身差の2着。これでスティルインラブは、1986年のメジロラモーヌ以来、史上2頭目となる牝馬三冠馬に輝いた。
一方で牝馬三冠レースを全て1番人気で走り、その全てがスティルインラブに敗れるという雪辱を受けたアドマイヤグルーヴ。ただ、この2頭の戦いはまだ続くのである。
真の女王へ
秋華賞後は、秋の古馬を含めた牝馬最強決定戦エリザベス女王杯(G1)に出走したアドマイヤグルーヴ。このレースでは、牝馬三冠馬スティルインラブに次ぐ2番人気となり、3歳の牝馬が人気を分け合う形となった。
ただ、古馬牝馬もローズバドやダイヤモンドビコーといった錚々たるメンバーが揃った中で、レースではオークス馬スマイルトゥモローが大逃げをみせた。
縦長の展開となった中、スティルインラブが先に動き、アドマイヤグルーヴがそれを追った。
最後の直線でオースミハルカが先に抜け出し、外からスティルインラブ、さらにその外からアドマイヤグルーヴの2頭が並んで猛追する。
残り100mの時点で2頭が並走。この年の3歳世代の強さが如実に現れた。
そして、最後はスティルインラブとゴール前まで火の出るようなデッドヒートをハナ差で制したのは、アドマイヤグルーヴの方で念願のG1初勝利を飾った。
しかもG1で負け続けたライバルに競り勝っての勝利だけに喜びも増したに違いない。武豊騎手も小さくガッツポーズをみせた。
こうして、アドマイヤグルーヴは、祖母ダイナカール、母エアグルーヴに続き母仔3代G1制覇という偉業を成し遂げたのである。
女帝の娘
晴れてG1馬となったアドマイヤグルーヴの翌2004年は、牡馬相手が中心となる競馬になった。
産経大阪杯(G2)、金鯱賞(G2)では、それぞれ7着と5着。そして、春の目標であった宝塚記念(G1)を回避した後、続くマーメイドS(G3)で前年のエリザベス女王杯以来の勝利を収めた。
秋に入ると京都大賞典(G2)では、ナリタセンチュリーの4着のあと、天皇賞・秋(G1)に出走。ここでは、のちの”秋古馬三冠馬”となるゼンノロブロイ、桜花賞馬ダンスインザムードに次ぐ3着だった。
そして、天皇賞・秋から中1週で迎えたエリザベス女王杯。強行突破ともいえる出走は、連覇のかかる大事な一戦。
しかし、1番人気は、この年の秋華賞を制したスイープトウショウに譲る形で2番人気に支持された。続く3番人気スティルインラブも昨年の秋華賞から5連敗を喫していたが、もちろん真の女王の座を虎視眈々と狙っていた。
ちなみにナリタブライアンの産駒で唯一のオープン馬となったブライアンズレターも出走している。
レースでは、雲に覆われた中で行われ、スイープトウショウが出遅れ殿からスタート。メイショウバトラーが逃げをみせ、アドマイヤグルーヴはスティルインラブの後ろにピッタリと付けた。前年同様に逃げ馬が逃げ切り大勢を図る中、馬場の真ん中から一気に追いこんできたのはアドマイヤグルーヴだった。
そして、前を行くオースミハルカを差し切り見事、連覇を達成。これでエリザベス女王杯連覇はメジロドーベル以来、史上2頭目の快挙となり、また、鞍上の武豊騎手は2001年のトゥザヴィクトリー、2002年のファインモーションに続き同レース4連覇を果たした。
女王の座を譲る時…
年が明け、牡馬相手のレースが中心となったアドマイヤグルーヴ。
この年も産経大阪杯から始動し、天皇賞・春(G1)、金鯱賞と出走。それぞれ4着、11着、4着と敗れ、宝塚記念では、スイープトウショウの8着に終わる。
さらに秋を迎え、昨年同様に挑んだ天皇賞・秋では、同世代の牝馬ヘヴンリーロマンスの17着と大敗したが、同一G1 3連覇がかかったエリザベス女王杯では惜しくもスイープトウショウの3着に敗れ、女王の座は譲りはしたものの、これまでの女王の名に恥じない走りを披露した。
そして、引退レースとなった阪神牝馬S(G2)では、この年の桜花賞・NHKマイルC(G1)を制したラインクラフトに1番人気を譲る形となったが、それでもここを勝利し、有終の美を飾ったのである。
こうしてみると、牡馬相手のレースで勝ったのはデビューからの3戦のみだった。
それは、”男勝り”の母とは対照的に、牡馬相手のレースだとなぜか萎縮してしまい、能力が発揮できなかったともっとも背中を知る武豊騎手がそう語っている。
それでもエリザベス女王杯連覇という勲章を持った2000年代前半を代表する名牝だったことは間違いない。そして、アドマイヤグルーヴの名は、母になってからが本当の凄さを世に示すことになるのである。
偉大な母として
こうして、エリザベス女王杯連覇という大きな勲章で母の名に恥じない走りをみせたアドマイヤグルーヴは、繁殖牝馬としてさらに偉大な功績を築いた。
それは、5番仔となる牡馬ドゥラメンテを生んだことである。ドゥラメンテは、皐月賞(G1)・日本ダービー(G1)と牡馬二冠馬に輝き、母子4代に渡るG1勝利を達成した。
そして、種牡馬としても2022年の牝馬二冠馬スターズオンアース、翌2023年には牝馬三冠馬リバティアイランドを輩出。また、牡馬ではタイトルホルダー、ドゥレッツァといった菊花賞を輩出している。
ただ、アドマイヤグルーヴもドゥラメンテも早逝し、すでにこの世を去っている。本当に残念しかない。
しかし、ダイナカールからエアグルーヴ、そしてアドマイヤグルーヴに続いた偉大な血は、残された産駒たちにしっかりと継承され、この先も日本競馬史に輝き続けることは間違いないだろう。
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生涯戦績 21戦 8勝(8-1-3-9)
主な勝鞍 エリザベス女王杯(2回)
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