ナリタタイシン|歴代最強馬|剃刀のような切れ味|名馬たちの記憶⑮

名馬たちの記憶
jra-van

ナリタタイシン
剃刀のような切れ味

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剃刀のような切れ味 ナリタタイシン

1993年、皐月賞(G1)――ビワハヤヒデウイニングチケットというのちに日本競馬史上に名を残すことになる両馬が注目される中で一瞬、目を離した隙に外から突っ込み、この2頭を子供扱いした馬がいた。
上がり最速の凄まじい加速っぷりは、まさに『剃刀のような切れ味』
その競走馬こそ、第53代皐月賞馬ナリタタイシンである。

今回は、その『剃刀のような切れ味』と表現された驚異の末脚を持ったナリタタイシンに迫りたい。

忘れられた仔馬

ナリタタイシンの父リヴリアは仏国のG1を2勝した名馬であり、その母ダリアは英国で2回も年度代表馬に輝いた名牝である。
タイシンリリィは中央競馬で25戦を走り僅か1勝しかできなかった平凡な繁殖牝馬で期待は薄かった。
しかし、生産者は英国の超名牝ダリアの血を受け継ぐ仔馬がいち早く誕生する瞬間を待ち侘びたという。
一般的に競走馬の出産は主に春先前後。ところが、春先を迎えゴールデンウィークが過ぎても名牝ダリアの血を受け継ぐ仔馬は、なかなか生まれてこなかった。

そして、6月のある朝、生産者も仔馬の存在を半分忘れかけた頃、いつの間にか生まれていて気が付くと立っていたという。
忘れられた、この仔馬こそ、のちのナリタタイシンである。

小さな問題児

一般的に比べてかなりの遅生れのせいか、牡馬のサラブレッドとしては平均馬体重470キロ前後よりも小さい420〜430キロ台と華奢な馬体かつ激しすぎる気性だった。
それは競走馬として、やっていけるのかと心配されるほどであった。
また、デビュー前の調教では乗った人を振り落とし、気が乗らないと勝手に厩舎に帰ったり、人の目も気にせずゴロリと寝そべり昼寝する。
ナリタタイシンは”小さな問題児”と呼ばれていた。

天才との出会い

デビュー後、3歳(現2歳)の暮れまでに5戦1勝。
人気を得て良い脚を魅せるも後一歩で勝てない。激しい気性ゆえに陣営の不安な日々は続いた。
しかし、その年の暮れのラジオたんぱ3歳S(G3)で魅せた後方一気の末脚で重賞初勝利を果たした。

その時に魅せた驚異の末脚は、小さな馬体であの末脚は凄いと評価され『剃刀のような切れ味』を持っていると話題になった。

3歳で重賞馬となり目指すはクラシックである。年が明け、皐月賞トライアルレース弥生賞(G2)では、天才・武豊騎手とのコンビが組まれることになった。
しかし、相手はこれまで4戦3勝と無類の強さを誇り世代トップの評価を得ていたウイニングチケット。
レースでは、得意の戦法である後方一気から剃刀のような切れ味をもった末脚を披露。ゴール前で強襲するもウイニングチケットには僅か届かず2着と惜敗。それでもクラシック戦線の主役候補として存在感をアピールした形となった。

剃刀のような切れ味

そして、迎えたクラシック第1弾の皐月賞。
3番人気のナリタタイシンに対して、堂々の1番人気は、これまで5戦4勝のウイニングチケット。2番人気は、これまで6戦とも連を外したことがない堅実なビワハヤヒデだった。

ゴール前、映像は名手柴田が騎乗するウイニングチケットと名手岡部が騎乗するビワハヤヒデに焦点を当てていた。
すると、大外から凄い脚で1頭が駆け抜けてくる。名手が手綱を取る有力馬の2頭を天才と小さな問題児が一瞬にしてゴール前で交わした末脚。
まさに剃刀のような切れ味に場内は騒然。実況アナも凄い脚!と何度も繰り返していたほど凄まじい末脚だった。
こうして1993年のクラシック第1弾はナリタタイシンが制した。

唯一クラシック三冠の条件を持つナリタタイシンの次走は、当然ながらホースマンの憧れ日本ダービー(G1)である。
しかし、皐月賞馬でありながら世間の目はウイニングチケット、ビワハヤヒデの順で3番手評価。

だが、世間の目が正しかったのかレースは人気通りの決着。ここでは剃刀の切れ味は2頭に届かず3着に惜敗したのである。

BNW時代を形成

皐月賞1着、日本ダービー3着と世代トップの実力を誇った小さな問題児は、夏を経て菊花賞トライアル京都新聞杯(G2)に出走登録するも1週間前の調教中にアクシデントが発生する。
それは運動誘発性肺出血だった。
幸い大事には至らなかったが、満足な調教は出来ていない。
それでも休養明けからのぶっつけ本番で菊花賞(G1)に出走することになったナリタタイシン。

淀の3000m――長丁場となる菊花賞では肺出血の影響か終始、最後方で追走。そのまま1頭も交わせず、ブービー(17着)でゴール。奇遇にもレース中に心房細動を起こしたネーハイシーザーが後ろに位置したため、最下位にはならなかったが皐月賞馬として不甲斐ない結果に終わってしまう。

しかし、年が明けて古馬となった初戦の目黒記念(G2)では、久々に剃刀のような切れ味が炸裂し勝利。次走の天皇賞・春(G1)ではビワハヤヒデの2着だったが、まだまだ皐月賞馬健在をアピールした格好となった。

錆びついてしまった剃刀の切れ味

しかし、その後は運に見放されたのか、下痢や屈腱炎に悩まされることになる。
その後、1年間の休養を経て臨んだ宝塚記念(G1)で惨敗。
残念ながら錆びついてしまった剃刀は復活することなく、待ち侘びたファンの思いも届かず無念の引退となった。

父リヴリアが早逝したため、祖母ダリアから続く良血を広めるべく、種牡馬生活には大きく期待された。ところが、残した産駒は僅か160頭。その仔たちは中央競馬で8勝するも地方競馬では290勝もの勝ち星を上げた。
しかし、残念ながら重賞勝ち馬どころかオープン馬さえ輩出することが出来ず、ナリタタイシンの血は孫世代にて途絶えてしまった。

あれから四半世紀以上の月日が経ち、現役時代3強と呼ばれたビワハヤヒデ、ウイニングチケットとともに2020年に揃って30歳を迎えた。
長寿も競い合う3頭であったが、2020年4月にナリタタイシンが先に天国へ旅立ち、続いて7月にはビワハヤヒデがこの世を去った。

そして、現在、余生を過ごすのはウイニングチケットのみである。

きっと、天国では今もなお、小さな問題児は自由気ままに走り回っているだろう。

リヴリア Riverman Never Bend
River Lady
Dahlia Vaguely Noble
Charming Alibi
タイシンリリィ ラディガ Graustark
Celia
インターラーケン サミーディヴィス
シルヴァーファー

生涯戦績 15戦4勝(4ー6-1-4)
主な勝鞍 皐月賞


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