ウオッカ|歴代最強馬|陶酔の女傑|名牝たちの記憶③

名牝たちの記憶
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ウオッカ|歴代最強馬|陶酔の女傑|名牝たちの記憶③

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ウオッカ 陶酔の女傑

腕力などの力強さは男女で大きな差がある。これは生まれ持った性別による骨格などの違いから致し方ない。
こと、それは競走馬にとっても同じである。

どうしても走る力など筋力の付き方から牝馬よりも牡馬が強いのは一般的な考えだろう。そのため斤量差などでハンデを付けるが、それでも牡馬の方が有利が一般的な見解である。
競馬で例に挙げると、3歳世代の頂点を決める約90年の歴史を持つ日本ダービーにおいて牝馬の勝利はこれまで僅か3頭。
勝率に換算すると2%程度でほぼ勝ち目がないと言って良い。

しかし、その2%に挑戦し、64年振りに偉業を達成した牝馬がいた。
それがウオッカである。

今回は、そのウオッカの偉業を含めた輝かしい記憶に迫りたい。

馬名の想い~お酒からの連想~

タニノギムレット(父ブライアンズタイム)は第69回日本ダービー(G1)を制した名馬であり、母タニノシスター(父ルション)は中央競馬にて5勝した実績馬。

そんな父母の間にウオッカは2004年4月4日という何とも日本人が嫌う数字が揃った日に誕生した。父の馬名ギムレットはジンベースのショートドリンクカクテルを指すため、それよりも強いお酒を連想させ父よりも強くなるようにとの願いが込められウオッカと命名された。

また、冠名であるタニノを付けなかったのはストレートで飲むことでより強くなってほしいと馬名と同じくお酒が連想されたと言われている。
そんな人々を心酔・・させる走りを期待されたウオッカはデビュー前から大物の風格が漂っていた。

2歳女王を経て永遠のライバルと出会う

デビュー戦で格の違いを見せた走りで快勝後、条件戦では、2着に敗れるも続く2歳女王決定戦では4番人気ながら、重賞2勝を含む4戦3勝の1番人気アストンマーチャン(父アドマイヤコジーン)を差し切って優勝。見事、2歳女王の座に就いた。

年が明け、3歳初戦となったオープン戦、桜花賞トライアルのチューリップ賞(G3)と連勝。その強さから、早くも三冠牝馬誕生の声が挙がった。

しかし、チューリップ賞で初対決となった同期馬ダイワスカーレット(父アグネスタキオン)が、のちに語り草となるほど、ウオッカと死闘を演じる二大女優になることを誰が予想しただろうか。
そして、早くもそのダイワスカーレットが桜花賞(G1)で立ちはだかる格好となった。

チューリップ賞での敗戦で同じ轍を踏むまいとダイワスカーレット陣営は捲り策から早め先行策を取った。逆にウオッカはいつものスタイルで中団から勝負に出る。
しかし、差し切りことができずダイワスカーレットの2着に甘んじてしまい早くも牝馬三冠の夢が途絶えた。

桜花賞を敗れたことで目標を前々から考えていた日本ダービーに切り替えたウオッカ陣営。これが64年振りの快挙に繋がることを誰が想像しただろうか。

64年振りの牝馬ダービー制覇

牝馬として日本ダービーの挑戦は実にビワハイジ(最強牝馬ブエナビスタの母。ダービーは13着だった)以来、実に11年振りとなったウオッカの日本ダービー挑戦。

大方の予想はウオッカは強いけど牝馬だし厳しいのではないかと見解した。その結果、1番人気に支持されたのは皐月賞3着で素晴らしい末脚を持ったフサイチホウオーであった。
フサイチホウオーの父ジャングルポケットは6年前の日本ダービー馬でその父トニービン産駒は東京コースを得意とする血統。プラスしてフサイチホウオーは、それまで東京コース3戦3勝と相性も抜群。

そんな強敵を前にウオッカは3番人気に支持されたことは競馬ファンにとって牝馬の日本ダービー制覇を夢見たのかも知れない。

さて、快晴の中で行われた第74回日本ダービーには、ビワハイジの息子アドマイヤオーラ(父アグネスタキオン)も参戦し母の雪辱を果たそうとするもウオッカが尻目に突け放す格好を魅せた。
そして、上がり3ハロン33秒の豪脚で見事、64年振りとなる牝馬で日本ダービー制覇を達成。
鞍上の四位洋文騎手が右手を挙げた姿は象徴的だった。また、唯一の父娘で日本ダービー制覇ともなった。

燃え尽きた日本ダービー馬

ダービー馬に対して良くダービーを勝つためだけに生まれてきた・・・・・・・・・・・・・・・・と揶揄されることが多い。
思い出すとアグネスタキオンの全兄アグネスフライト(父サンデーサイレンス)やワンアンドオンリー(父ハーツクライ)などが代表例ではないだろうか(あくまでも私的に。ダービー馬に対して失礼な話をお許しください)
アグネスフライトは名手河内洋騎手をダービージョッキーにするため。ワンアンドオンリーはダンスインザダークで涙を呑んだ名伯楽橋口弘次郎調教師にダービートレーナーの称号をプレゼントするため。現にアグネスフライトはダービー制覇後、9連敗で1度も勝つことなく引退。ワンアンドオンリーに関してはダービー制覇後の菊花賞トライアル神戸新聞杯の勝利を最後に23連敗を喫し引退している。

ダービー馬はダービーを制してしまうと燃え尽き症候群に陥ってしまう呪縛は歴史的女傑ウオッカにも襲い掛かった。
まずは、ダービーから約1カ月後、軽斤量で出走可能なため出走した宝塚記念(G1)では、1番人気に支持されるも8着と惨敗。
続く、秋華賞(G1)では永遠のライバル、ダイワスカーレットに苦杯を飲まされ3着。ジャパンC(G1)でも4着、有馬記念(G1)ではファン投票1位だったが伏兵馬マツリダゴッホ(父サンデーサイレンス)の前に11着と大敗。
4歳となり、初戦の京都記念(G2)でも自慢の末脚が炸裂せず6着。次走は初の海外挑戦となったドバイデューティーフリー(G1)でも4着が精一杯。
その後、春の古馬牝馬女王決定戦ヴィクトリアマイル(G1)もエイジアンウインズ(父フジキセキ)に届かず、2着。歴史的快挙となった日本ダービーの美酒から1年が経過。既に7連敗を喫していた。

復活、そして伝説のレースへ

これ以上負けてしまえば引退の二文字が過った陣営は、中2週というハードスケジュールであったが安田記念(G1)に出走を表明する。
なお、ダービー馬が安田記念に挑むのはサクラチヨノオー(父マルゼンスキー)以来19年振りと異例の出走とも呼ばれた。

しかし、ここで歴史的女傑は復活を魅せるのである。

レースでは終始、好位を位置し結果的には直線で2着馬に3馬身半差の快勝。牝馬で安田記念を制したのはノースフライト以来14年振りとなり、さらにはダービー馬が2000m未満のG1を勝つことが初の快挙でもあった。

見事、復活を果たしG1・3勝目を挙げたウオッカ。そして、この先には永遠のライバル ダイワスカーレットとの死闘が待ち受けていたのである。
夏の休養を経て秋初戦となった毎日王冠(G2)では2着に甘んじた後、向かうはダイワスカーレットと久々の再戦となった天皇賞・秋(G1)である。

このレースがのちに二大女優対決の代表的レースとなった。1つ歳下の日本ダービー馬ディープスカイ(父アグネスタキオン)とウオッカが最内前で粘るダイワスカーレットに襲い掛かり、3頭が並ぶゴール前。
真ん中で若干遅れを取ったディープスカイに対して残り50mで再びダイワスカーレットが伸びを見せ大外ウオッカが再度ダイワスカーレットに並びかけた。
大接戦のゴール前は最内ダイワスカーレットと外ウオッカが同時にゴール板を通過したかに見えた。
写真判定と表示された掲示板。その判定結果は実に15分も経過し発表された結果は僅かハナ差2センチでウオッカに軍配が上がった。

死闘の末に得た幾多の快挙

ダイワスカーレットとの死闘を終え、その後は再度ジャパンC(G1)に挑戦するも3着。
有馬記念ではファン投票1位に選出されるも疲労のため回避しウオッカの4歳は幕を閉じた。
そして、この年の安田記念と天皇賞・秋を制したことが評価され年度代表馬に選出。これはエアグルーヴ以来、11年振り牝馬での年度代表馬となった。

年が明け、5歳となったウオッカは成熟期を迎える。年明け初戦は昨年同様ドバイデューティーフリー(G1)に挑戦するも重馬場の影響もあってか7着と敗退。
帰国後、ヴィクトリアマイルに出走し7馬身差の快勝劇を魅せ自身G1・5勝目を飾る。
その後は、昨年同じローテーションとなった中2週での安田記念に挑戦。しかし、ここでは最後の直線で何度も進路を塞がれる格好となり、なかなか抜け出せない状態だったが残り100m。大きなスライドで一気に抜け出し安田記念を連覇。

この時点で牝馬として初の賞金10億円を突破した。

再び夏の休養を経て、挑んだ秋初戦の毎日王冠、続く天皇賞・秋では2着、3着と敗退。限界説が流暢し引退が囁かれた。それでも陣営はウオッカを信じ3度目となるジャパンカップに出走させた。
そして、陣営の期待に応えウオッカは3度目の正直で勝利を手にしG1・7勝目。
芝G1・7勝は牝馬初の快挙である(のちにアーモンドアイが牝馬として史上初の芝G1・9勝を達成する)

また、東京競馬場の古馬G1(安田記念、ヴィクトリアマイル、天皇賞・秋、ジャパンカップ)完全制覇も史上初(ヴィクトリアマイルがあるため牝馬しか達成できない)の快挙となった。

その結果、この年も年度代表馬に選出され、牝馬として、2年連続の年度代表馬は史上初である。
競馬ファンを陶酔させた女傑ウオッカは”3つの史上初”を達成し、翌年のドバイワールドカップ前哨戦の8着を最後に陶酔の女傑はターフを去ることになる。

陶酔の女傑が残した賜物

引退後、アイルランドで繁殖生活を送ったウオッカだが僅か6頭の産駒を残し、2019年4月に蹄葉炎のためこの世を去った。その6頭のうち世界的大種牡馬シーザスターズと配合されたタニノアーバンシーの産駒(牡馬)が今年デビューする予定だ。

また、世界最強馬との呼び声が高いフランケルとの間に生まれたタニノフランケルが種牡馬入りとなりウオッカの血は、この2頭の息子と娘に託された。

いくつもの歴史的快挙を達成し競馬ファンを陶酔させた女傑ウオッカ。
JRA顕彰馬にも選ばれた彼女の血はこの先、この2頭によって受け継がれ、そしてウオッカを超える孫たちの誕生を夢見て酔い痴れたい。

タニノギムレット ブライアンズタイム Roberto
Kelley’s Day
タニノクリスタル クリスタルパレス
タニノシーバー
タニノシスター ルション Riverman
ベルドリーヌ
エナジートウショウ トウショウボーイ
コーニストトウショウ

生涯戦績 26戦 10勝(10-5-3-8)
主な勝鞍 阪神ジュベナイルフィリーズ、日本ダービー、ヴィクトリアマイル、天皇賞・秋、安田記念(2回)、ジャパンC


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